近畿歯科用品商協同組合

◆ 平成版弥次喜多のつぶやき  2014-01-28 16:39:34

 「人生楽ありゃ苦もあるさ―」
 そんな文句が似合う、とある田舎の一本道。
空の青と茶畑の緑が鮮やかであります。
 え?そんなところで何してるのかって?ご覧のとおり歩いてるんですよ。この道を、東海道をね。そう、目的地は江戸・・じゃなかった、東京は日本橋まで―
 あぁ、隣のお方は得意先の先生。たった一度の人生だ、どこかへでっかい旅がしたいよね、とあれこれお話ししているうちに意気投合。あの東海道五十三次を歩いてみるかと相成ったわけです。まったくお互い物好きです。思い返せば、京の三条大橋を出立したのが一昨年の春。鴨川の桜が満開でありましたなあ―
 そうそう、昔の人は一日七、八里(注:一里は約四q)普通に歩いていたそうですよ。なかには日の出から暗くなるまで十五里も歩き通した、なんて健脚も居たとか。箱根駅伝も顔負けですねえ。
 とは言っても今じゃ道は綺麗に舗装され、コンビニは行く先々にございます。何より格好、足回りは完璧。これは楽勝かも、と始めは意気揚々でした、がその考えは甘かった―
 京を出て最初の宿場は大津。恥ずかしながら初日はそこまで歩くのが精一杯。それからも先生と二人、暇を見つけては毎度日帰りの強行軍で前回の終点からまた歩き出し、先へ先へと歩みを進めて参りました。それでも一日二十q歩くのが関の山。いやいや昔の人はエラかったと何度お互い顔を見合わせて茫然としたことか―
 ところで名の有るお方から庶民に至るまで、この道を今までどれくらいの人が行き交ったのでしょうか?気の遠くなるような話ですなあ。昔の旅は今よりも不便で危険であったことは間違いありません。それに比べて今はどうです。便利な乗り物や電化製品に囲まれて、スマホで何時でも何処でもお喋り。おまけにインターネットってやつが何でも教えてくれるからくりです。ですが私は少し羨ましくも思えるのです。人と直に向き合い、汗を流して緑豊かな街道を行き交った昔の人々を―
 そう、人生は自分で楽しくするものですね。一見何でもないようなことにも得るものがあるかもしれませんもの。
 元々人生なんて面白くないんだ、それを面白くするのは自分の心がけ次第なんだ、と言ったのは明治維新の豪傑、高杉晋作。さすが、うまいこと仰います。仕事も同じことではないですか。苦しいなかにも楽しさを、何か意味を、見つけましょうよこの旅のように―
 あぁ!柄にもない話をしてたら道を間違えちゃいましたよ。先生こっちですよう―
 さあ、あの峠を越えたら富士が見えますよ、きっと。新年からまた元気よく歩きたいですね。皆様、本年も宜しくお願い致します。
 「―歩いて行くんだしっかりと。自分の道を踏みしめて」
奈良県支部 寺田 昌樹
出処 日本歯科用品商協同組合連合会 会報 No.131 新春号 61ページ